アドラー心理学では「褒める」「叱る」ことを否定しています。
それは子育てや教育現場だけでなく、社会人になってからの部下の教育や夫婦、友達同士、恋人同士といった全ての関係に当てはまります。
人を育てることや、世渡り術として「褒めること」が効果的だと考えられていますが、なぜアドラー心理学では「褒めること」を推奨していないのでしょうか?
また、あなたの周りにやみくもに他人を褒めまくる人がいませんか?
やたらと人を褒めまくる人は要注意人物の可能性大です。その理由も合わせてお伝えします。
もくじ
アドラー心理学の「褒めない・叱らない」とは
アドラーは賞罰教育を否定しています。
「褒めることは相手の自立心を阻害し、褒められることに依存する人間を作り出してしまうから」とアドラーは著書で述べています。
「好ましい行動をとった時に褒め、そうではない時に叱る」という行為をくりかえすたびに、「褒め言葉」に依存し、いつの間にか他者のコントロール下におかれてしまう状況に陥ります。
そして、褒めてくれる人がいるならやる、でも、誰も褒めてくれないならやらない、という考え方に行きついてしまうのです。
「褒める」という行為は基本的には上から下への評価という側面を持ちます。アドラー心理学で推奨されているのは「横から勇気づける」(横=対等の関係)
子どもには子どもの、部下には部下の、友人には友人の、それぞれの「課題」があります。そこへ立ち入ってはいけない、という「課題の分離」はアドラー心理学の軸となる考え方です。
あらゆる人間関係が破たんしていく大きな原因の1つは「課題の分離ができていない」から。
相手のとの関係を「相手は下だ」との認識があるから、「褒める・叱る」ことをして他者への課題に土足で踏み込もうとするのです。
【関連記事】【アドラー心理学②課題の分離】恋愛・夫婦・親子、全ての対人関係が劇的に変化【嫌われる勇気】
「褒める・叱る」のではなく「援助」=「勇気付け」
たとえば、相手の状況や立場で(子ども、年下、部下、初心者)未熟な存在に見えてしまうかもしれませんが、その関係は対等でなければなりません。
褒める・叱るは上下関係、援助は対等な関係です。
では、「援助」とはどのような行為かといいますと、
- 相手に必要な情報を提供すること
- 相手をサポートする意思があることを伝えること
- 相手が助けを求めてきたときに、必要な援助をすること
- 失敗をとがめないこと、そこから学んだことを認める
- 評価ではなく感謝の気持ちを伝える
このような手助けは相手を勇気づけることにつながります。
褒める、という行為は自分の価値観を押し付けることにもなりかねません。
相手が思ったこと、感じたことに寄り添って共感することで、「自分の価値観は自分で決める」という自分軸のある人間に育つ、というわけです。
やたら人を褒めてくる人の心理は闇が深い?
「自分の方が立場が上」という意識の現れ
褒めるという行為は「上から下への評価」という側面も持ち合わせています。
誰かに褒められたところで「お前にいわれたくないわ」「あんた何様のつもり?」と感じてしまった経験はありませんか?
相手は自分のことをほめているのに、嫌な気分になってしまった原因は相手が「自分の方が立場が上」をアピールしたいがための「褒め言葉」だということを直感的に気づいたから。
モラルハラスメントの加害者に多いのはこのタイプです。
嫌われたくない八方美人タイプ
コミュニケーションを円滑にするために術(すべ)は「褒めることだ!」と信じて、やみくもに他人を褒める八方美人タイプ。
人って、ある程度年齢を重ねれば、その褒め言葉が「本当に褒めているのか」「単なるお世辞なのか」は見抜けますよね。
よって、褒めておけば嫌われない、という心理からべたべたと不自然に他人を褒める行為は信用を失い、結局嫌われないけど好かれないのです。
本人はうまく立ち回っているつもりのようですが、周りから見れば「媚を売っている」という姿に見えてしまいます。
自分が褒められたいから。承認欲求を満たして欲しいかまってちゃんタイプ
私が「いいね!」したんだから、あなたも「いいね!」しなさいよ、というFacebookやインスタグラムに生息する人々。
「私もあなたのことを褒めたんだから、あなたも私のことを褒めて!」というやっかいなタイプですね。褒め言葉にあざとさ、わざとらしさが透けて見えます。
女が発する「かわい~」「きれ~い」「わか~い」「すご~い」といった類のうすっぺらい褒め言葉は聞いたり読んだりすると寒気が、、、
「はいはい、あんたもそう言ってほしいんでしょ」と気分がしらけるので、その手の人間とはどうしても上っ面だけの付き合いとなり、遅かれ早かれその関係は希薄なものとなっていきます。
コントロールできるカモを探しているタイプ
ぼったくり商品やぼったくりサービスに嬉々として申し込んでくれるカモをみつけるために、みえみえの褒め言葉を放つ人には注意が必要。
宗教やセミナー商法といった信者ビジネスのテクニックの一つですね。
「この教祖(コンサルタントや先生、占い師など肩書はいろいろ)は私のことをわかってくれる。
認めてくれる、褒めてくれる」とどんどんのめりこんで行き、気が付けば搾取され続けている、なんてことにならないように。
褒められて、いい気分になりたいがためにお布施を払っても、その金は教祖の養分になってるだけなのに、騙されている本人は教祖のことを「すごい人」だと信じて疑っていない。
それはカモを褒め続けていい気にさせたからです。
まとめ
「言葉巧みに近づいてくる者は、下心があるから油断してはいけないということ」という意味の「褒め言葉には油断するな」という諺(ことわざ)があります。
褒める・叱るは上下関係、援助(勇気づけ)は対等な関係、とアドラーも述べているよう、やたら褒めてくる人はあなたを下に見ているか、依存させたいか、何か裏があるってことも。
あなたが何気なく人を褒める癖があれば、もしかしたら「あんた何様?」と思われている可能性だってあるんです。
さらにアドラー心理学では「褒めることは依存心の強い人間を作る」と主張しています。
人を褒めることが良いことだと思い、次から次へと褒め言葉を他者に与えることは、依存心の強い人間に付きまとわれる原因にもなります。
良かれと思って褒めても、相手にとってもあなたにとってもマイナスの効果しか得られないケースもあるってことは意識しておきたいですね。
【アドラー心理学①目的論】問題解決には過去も他者も関係ない【嫌われる勇気】
【アドラー心理学②課題の分離】恋愛・夫婦・親子、全ての対人関係が劇的に変化【嫌われる勇気】