2018年のイスラム教のラマダンの時期は5月15日~6月14日。
日本ではなじみのない風習なので、「ラマダン=断食」という認識はなんとなくあるかもしれませんが、その理由やルールがぼんやりしている方も多いのではないでしょうか。
今回はイスラム教のラマダンの基本情報と、テロとの関連性、イスラム教への誤解についてお伝えしたいと思います。
もくじ
イスラム教のラマダンとは?
「ラマダーン」を、断食のことと誤って捉える人も少なくないが、ラマダーンとは、あくまでもヒジュラ暦における月の名である。ただし、ラマダーンという言葉が断食を今日では意味することも増えてきている。
イスラム暦で9月を意味するラマダーンに、コーランが預言者ムハンマドに啓示され、イスラム教徒にとって、ラマダンは「聖なる月」となった。(ラマダーンーWikipedia)
イスラム教徒の主神である「アッラー」への感謝の気持ち、信仰心の強化として断食を行います。
イスラム圏の国だけでなく、世界中に広がるイスラム教徒が居住国でラマダンを行うので、私が住むオーストラリアでも周りのイスラム教の友だちや知り合いはもうすぐラマダン時期がくるので断食が始まります(現在:5月13日)
イスラム教のラマダンのルールへの疑問
私は「断食」と聞いて「え?約1か月も飲まず食わず?!」と疑問を持ってしまったので、以下にわかりやすくラマダンのルールと、ラマダンが終わったあとの習慣について説明します。
イスラム教のラマダンのルールをおさらい
- 飲食禁止
- 喫煙禁止
- 性行為禁止
(※日の出から日没まで、という条件付き。日の出前、日没後なら禁止事項はありません)
- 人に親切にする
- 悪口を言わない
- 生理中の女性は参加できない
- 子どもは本人の意思で参加を決める。(平均は10歳前後)
- 旅行者や重労働者、妊婦・乳幼児など事情のある人は断食は免除
つまり、ラマダンと言えば「断食」ですが、「日の出から日没まで」という条件付き。だから、1か月間、飲まず食わずではないよ、ってことです。そして、イスラム教徒でも旅行中であれば免除される、というルールもあります。
ラマダンの時期は企業や公共機関は就業時間を短縮するところもあり、日常生活は宗教行事がなによりも優先となります。
断食明けの「レバラン」「イード」のお祝い
約1か月間のラマダンが終わると、国によって名称は変わりますが「イード」「レバラン」と呼ばれる断食明けをお祝いする行事があります。ちょうど日本の大みそか~お正月ぽい奮起で街中はお祝いムードにつつまれます。
大掃除や洋服を新調したり、名物スイーツや料理つくって、家族や道行く人にふるまったりと、ラマダン明けをみんなで祝福します。
ラマダンの時期にテロが世界中で多発って本当?
海外在住者は所轄の領事館・大使館からラマダン前になると、「テロへの注意喚起」についてのメールが届きます。
内容はこんな感じ。
近年,ラマダン月及びその前後の期間に世界中で多数のテロ事件が発生しています。特にイスラム過激派組織 ISIL (イラク・レバントのイスラム国)等は、過去ラマダン月の期間にテロを呼びかける声明を発出しています。
シドニー領事館からのメールはそのほかテロ対策やテロの標的になりそうな場所や関連機関への連絡先などが書かれており、警戒を呼び掛けています。
領事館からのメール全文⇒ ~海外安全情報(広域情報)~ラマダン月のテロについての注意喚起
2017年 ラマダン期間中に発生したテロ事件
●英国:マンチェスター・アリーナにおける自爆テロ事件(5 月 22 日)
●インドネシア:ジャカルタにおける自爆テロ事件(5 月 24 日)
●アフガニスタン:カブール中心部での自爆テロ事件(5 月 31 日)
●フィリピン:マニラのリゾートホテルにおける銃撃事件(6 月 2 日)
●英国:ロンドンでの車両突入襲撃テロ事件(6 月 3 日)
●オーストラリア:メルボルン立て籠もり事件(6 月 5 日)
●フランス:ノートルダム大聖堂前における警察官襲撃テロ事件(6 月 6 日)
●イラン:テヘランにおける襲撃テロ事件(6 月 7 日)
●マリ:バマコ郊外リゾート施設における襲撃テロ事件(6 月 18 日)
●フランス:シャンゼリゼ通りにおける憲兵隊に対する車両突入事件(6 月 20日)
●ベルギー:ブリュッセルの駅構内での爆発事件(6 月 20 日)
●米国:ミシガン州フリント市内国際空港での襲撃テロ事件(6 月 21 日)
●インドネシア:スマトラ島警察官襲撃テロ事件(6 月 25 日)
ラマダンの時期に集中してテロ事件は発生しています。この時期は海外在住の方、海外旅行をする方へ「宗教施設やショッピングモール、コンサート会場、公共の交通機関など人がたくさん集まる場所へは極力近づかないよう」との注意を外務省は呼びかけています。
イスラム教への誤解
ここから私が個人的な意見で、読んでる方にお伝えしたいな、ってことを書いて行きます。
上記のように「ラマダン中のテロ」がだいだい的に何かしらのメディアで聞きかじると、イスラム教へのイメージって正直悪くなりますよね。
でも、これだけは声を大にして言いたいのですが、
イスラム教とイスラム過激派は別物です。
一部の「過激派」が引き起こす事件で、イスラム教徒へおかしな誤解を持つなよ、ってこと。
たとえば、「日本のカルト宗教が地下鉄にサリンをまいたから、日本人が信仰している宗教は異常だ」って外国人に思われてたら、「はぁ?ぜんぜん違うし!」ってなるでしょう?
イスラム教を信仰している友達や元クラスメイト、元同僚は穏やかで優しい人たちばかり。だから、「イスラム教はなんだか怖い」とばくぜんと悪いイメージを持たないでほしいんんだ。それ、100%誤解ですから。
それに、しょっちゅう「イスラム教が国教」のマレーシアやインドネシアに遊びにいきますが、嫌な思いや怖い思いは一度もしたことないし、「また行きたい」とそれらの国々に恋焦がれています。
それは、そこに住む人々、宗教が生活に根付いた雰囲気、厳かな宗教施設に魅力があるから。
「過激派」の事件がメディアでクローズアップされているから、イスラム教に対しあまり良くないイメージを持つ人もいるかもしれませんが、それってメディアの報道の仕方に問題があるんだと思うんですよ。
繰り返しになりますが、
イスラム教とイスラム過激派は別物です。
イスラム教徒以外の私たちができること
イスラム教以外の私たちはイスラム圏に滞在していたとしても、ラマダン(断食)に参加する必要はありません。
しかし、人々が多く集まる公共の場所での飲食は控えましょう。厳格なイスラム圏の国(主に中東)ではラマダン期間中の「公共の場所での飲食」が犯罪となり、宗教警察に通報されることもあるので注意が必要です。
また、やむを得ず断食中の方の近くで飲食をする場合(海外で働いてると良くあるシチュエーション)は、「食べますね」と一言かけて食べ始めるようにしてます。
身近にイスラム教でラマダンの断食中の方がいれば、「よいラマダンをお過ごしください」という意味の「ラマダン・ムバラク(Ramadan Mubarak)」「ラマダン、おめでとう」という意味の「ラマダン・カリーム(Ramadan Kareem)」と声をけるのもいいですね。
まとめ
キリスト教のイベント、クリスマスやハロウィーン、バレンタインデイは日本風にアレンジされ、若者を中心に定着しています。
⇒【関連記事①】ハロウィンでバカ騒ぎの日本人の姿が現実逃避に見えて切なくなった
日本風のキリスト教イベントはどれもこれも、はげしく経済効果が見込める行事となりましたが、今回お伝えしたイスラム教のラマダンのメインイベントは「断食」
「断食」流行らなそうですよねぇ。。。。
最近、食べ過ぎ・運動不足の私にとっては、ラマダンに見習って断食して胃腸を休ませることも必要かもしれません(笑)